広瀬川造形館のホームページ
https://hsg-zokei-kan.jp
2024-03-29T02:39:43+09:00
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2023-10-14T00:00:00+09:00
No.16
https://hsg-zokei-kan.jp/info/5389856
<p><span size="3" style="font-size: medium;"><span style="font-size: 8pt;"></span> <span style="font-size: 10pt;">広瀬川造形館の開設にあたり、「理想とする空間」のイメージとして下記の文章をHPに掲載してきました。この度HPの改訂にあたり、N</span></span><span size="3" style="font-size: 10pt;">o.16に移行いたしました。</span></p>
<p style="-webkit-text-size-adjust: auto; margin: 0px; padding: 0px; caret-color: #6a6a6a; font-family: 'Sawarabi Mincho'; letter-spacing: 1px;"> </p>
<p style="-webkit-text-size-adjust: auto; margin: 0px; padding: 0px; caret-color: #6a6a6a; color: #6a6a6a; font-family: 'Sawarabi Mincho'; letter-spacing: 1px;"> </p>
<p style="-webkit-text-size-adjust: auto; margin: 0px; padding: 0px; caret-color: #6a6a6a; color: #6a6a6a; font-family: 'Sawarabi Mincho'; letter-spacing: 1px;"><span style="margin: 0px; padding: 0px; font-size: 12pt; color: #000000;"> <span style="font-size: 10pt;">イタリアのラヴェンナにあるサン・ヴィターレという小さな聖堂を訪れた。</span></span></p>
<p style="-webkit-text-size-adjust: auto; margin: 0px; padding: 0px; caret-color: #6a6a6a; color: #6a6a6a; font-family: 'Sawarabi Mincho'; letter-spacing: 1px;"><span style="margin: 0px; padding: 0px; font-size: 10pt; color: #000000;">1984年の夏の暑い日で、人影も無く、古びた建物は、どこが入り口かも判らないほどの簡素な造りであった。</span></p>
<p style="-webkit-text-size-adjust: auto; margin: 0px; padding: 0px; caret-color: #6a6a6a; color: #6a6a6a; font-family: 'Sawarabi Mincho'; letter-spacing: 1px;"><span style="margin: 0px; padding: 0px; font-size: 12pt; color: #000000;"><span style="font-size: 10pt;">中に入ると天井が高く抜けていて、外観からはとても想像もできない開放感に満ち溢れていた。</span></span></p>
<p style="-webkit-text-size-adjust: auto; margin: 0px; padding: 0px; caret-color: #6a6a6a; color: #6a6a6a; font-family: 'Sawarabi Mincho'; letter-spacing: 1px;"><span style="margin: 0px; padding: 0px; font-size: 10pt; color: #000000;">内陣に施されたモザイクは、創建6世紀のものと言われ、見るからに劣化が進んでいたが、高窓から入る柔らかな光で輝き、まるで小さな宝石箱の中に入るような錯覚を覚えた。</span></p>
<p style="-webkit-text-size-adjust: auto; margin: 0px; padding: 0px; caret-color: #6a6a6a; color: #6a6a6a; font-family: 'Sawarabi Mincho'; letter-spacing: 1px;"><span style="margin: 0px; padding: 0px; font-size: 10pt; color: #000000;">数年後、大規模な修復が行われ、世界文化遺産となったが、この時の素晴らしい印象は忘れられない。</span></p>
<p style="-webkit-text-size-adjust: auto; margin: 0px; padding: 0px; caret-color: #6a6a6a; color: #6a6a6a; font-family: 'Sawarabi Mincho'; letter-spacing: 1px;"><span style="margin: 0px; padding: 0px; font-size: 10pt; color: #000000;">「時」と「人」と「場」、そんな空間を育てていきたい。</span></p>
<p style="-webkit-text-size-adjust: auto; margin: 0px; padding: 0px; caret-color: #6a6a6a; color: #6a6a6a; font-family: 'Sawarabi Mincho'; letter-spacing: 1px;"><span style="margin: 0px; padding: 0px; font-size: 10pt; color: #000000;"> </span></p>
<p style="-webkit-text-size-adjust: auto; margin: 0px; padding: 0px; caret-color: #6a6a6a; color: #6a6a6a; font-family: 'Sawarabi Mincho'; letter-spacing: 1px;"><span style="font-size: 10pt;"> </span></p>
<p style="-webkit-text-size-adjust: auto; margin: 0px; padding: 0px; caret-color: #6a6a6a; color: #6a6a6a; font-family: 'Sawarabi Mincho'; letter-spacing: 1px; text-align: right;"><span style="margin: 0px; padding: 0px; font-size: 10pt; color: #000000;">池田政治</span></p>
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2023-06-18T00:00:00+09:00
No.15
https://hsg-zokei-kan.jp/info/5206873
<p style="text-align: justify;"><span style="color: #333333;"><span style="font-size: 13.3333px;"> </span><span style="font-size: 13.3333px;">1つの材の上に別な材をのせることは、生活の中ではごく自然に行われています。紙や布などの薄い素材は、重ね合わせることによって厚みも増し、保温性など単独では得られない良さが生まれます。色も何色かを重ねて使うことによって、色味の幅や深みをだすことができます。また、「重ねること」によって物をコンパクトに収納することもできます。石のようにボリュウムがある材については、大きな塊になればなるほど重量も重くなり移動も運搬も大変になります。人の手で扱える程度の大きさに加工し、「積む」ことにより1つでは得られないかたちの可能性が広がってきます。レンガも石材と同様に巨大な建造物の建設に役立ってきました。木の文化である日本でも、庭園の景色に欠かせない石灯籠も、それぞれが別々に加工された部材が積まれることによって多様性が生まれきました。木材では、重ねることに「組む」ことが加わり、寺院や五重塔のように大型で強靭な構築物も建造されてきました。このように「重ねる」という行為は、身近なものから巨大なものまで、かたちあるものの源の1つであるといえます。</span><span style="font-size: 10pt;"> </span></span></p>
<p style="text-align: right;"><span lang="EN-US" style="font-size: 10pt; color: #333333;">(S.I)</span></p>
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2023-05-05T00:00:00+09:00
No.14
https://hsg-zokei-kan.jp/info/5138371
<p style="text-align: justify;"><span style="color: #333333;"><span style="font-size: 13.3333px;"> </span><span style="font-size: 13.3333px;">今回のGEUST展では酒百浩一さんの作品を紹介しました。酒百さんはフロタージュという技法を使った作品を手がけています。凹凸あるものに紙を置き、鉛筆などで擦って形状を写しとる技法です。19世紀初頭から始まった絵画運動の中では様々な技法が試みられました。フロッタージュもその1つです。対象物から紙に写しとる方法は、東洋では「拓本」として知られていますが、写しとる対象は著名な書などを刻んだ銘板からでした。フロッタージュを用いた作家が対象としたものは、日常のどこにでも見られるモノでした。酒百さんは、植物の葉から葉脈を写しとり、廃屋になった建物の部屋の壁を埋め尽くした「みどりの部屋」(越後妻有)やすでに閉鎖された町工場で使い古された道具などから収集した「大田のかけら」(東京・大田区)など、地域の人々の営みや生活の息づかいというものまでを写しとって制作につなげてきました。時には路上にうずくまり、時には壁に背伸びして制作する姿は、日常の中の非日常的な行為であり、長年にわたる活動は芸術活動の原点として印象的です。</span><span style="font-size: 10pt;"> </span></span></p>
<p style="text-align: right;"><span lang="EN-US" style="font-size: 10pt; color: #333333;">(S.I)</span></p>
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2023-02-26T00:00:00+09:00
No.13
https://hsg-zokei-kan.jp/info/5025278
<p style="text-align: justify;"><span style="font-size: 13.3333px; color: #000000;"> ある土地の人から「あれが牛伏山」と聞いた時、その指差す方向を目で追っているうちに、ゆったりと横たわっている1頭の牛の姿をとらえることができました。その手前に広がる田畑と集落の家々の姿と相まって、実にのどかな風景に改めて感じ入りました。元々はそうでないものに別なイメージを重ねることは、「見立て」と呼ばれ、ものと人を結びつける大切な役割があります。そのことによって、人とものの距離が急に近くなり、親しいものになることがあります。日本庭園では、山を築き、池を造り、石や石組みを配置する際に、日常よく知られている山や湖の名や生き物の名称をつけることがあります。リアルに再現しすぎると「なぞる」いうことになり嫌味にもなりますが、なるほどであれば「改めて感じみる」ということにつながります。陶芸においても焼成の過程で出来たムラや傷痕などに具体的なイメージを見出し、鑑賞することもあります。見立てるという背景には、見る人、使う人、そこに居る人がゆったりとした時間の中で、ものに触れ、愛で、一体になっている関係性があります。</span></p>
<p><span style="font-size: 10pt; color: #000000;"> </span></p>
<p style="text-align: right;"><span lang="EN-US" style="font-size: 10pt; color: #000000;">(S.I)</span></p>
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2022-12-25T00:00:00+09:00
No.12
https://hsg-zokei-kan.jp/info/4922587
<p style="text-align: justify;"><span style="font-size: 13.3333px; color: #000000;"> 1本の線の両端を結ぶと「輪」のかたちが生まれます。輪は連続を繰り返し「無限」という概念をかたちとして見せてくれます。人がいつどのように輪のかたちを発見したか定かではありませんが、太陽や月の光輪や、木の年輪、水紋など、生活の中で身近に見ることができます。同じ場所から同じ場所に戻ることから、古くから「循環」としてもとらえられてきました。季節の巡りや天体の動きから、自然や宇宙の無限いう言葉まで思いを巡らせてくれます。中心に向かって等距離で輪となり人が集うことは、等しさと繋がりを生み、日本では「和」の言葉とも通じて、和みと癒しの場を提供してくれます。時に新しく、時に古典的な意味をもって、造形作品の中でも象徴的に扱われてきました。輪のもつ循環性は、その繰り返しから閉じたかたちとしての閉塞感もあわせ持ちますが、その無限性は決して同じことを繰り返すことではなく、樹木の年輪に見られる様に、外に向かって新しい輪を広げていくことで「成長」の意味をもっています。</span></p>
<p><span style="font-size: 10pt; color: #000000;"> </span></p>
<p style="text-align: right;"><span lang="EN-US" style="font-size: 10pt; color: #000000;">(S.I)</span></p>
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2022-04-23T00:00:00+09:00
No.11
https://hsg-zokei-kan.jp/info/4516387
<p style="text-align: justify;"><span style="color: #000000;"><span style="font-size: 13.3333px;"> 新型コロナ以前から企画していた橋本和幸さんの「智の造形」展を『GUEST展』として開催しています。GUEST展では、本館2Fの多目的ギャラリーに池田政治、池田カオルの小作品を展示しつつ、ゲストとしてお呼びした作家の方の作品を同空間に展示していただくという企画展です。空間全体は、材を極めるという「質」で統一し、橋本さんの「智」という作品群とどちらかと言えば我々の「情」の作品群との可能な限りの融合を目指しました。私が橋本さんを紹介する文章の中で用いた「虚と実」という言葉が今回の展示によって鮮明にされ、身近に印象付けられた気がしています。作家があるイメージを「実」として造形化するとき、他の部分を無意識に削ぎ落としていくことになります。橋本さんの作品は、この削ぎ落としている部分を最初から意識し、視覚化していく姿勢で一貫しています。</span><span style="font-family: Arial, Helvetica, sans-serif; font-size: small;">橋本和幸の虚と実、</span><span style="font-size: 13.3333px;">池田カオルのさりげない日常の中の女性像、池田政治の解き放たれた</span><span style="font-family: Arial, Helvetica, sans-serif; font-size: small; text-align: start;">時間</span><span style="font-size: 13.3333px;">、三者がひとつに融合した空間として観ていただければ幸いです。日常では見えにくいものを視覚化する役割が造形にはあります。</span></span></p>
<p><span style="font-size: 10pt; color: #000000;"> </span></p>
<p style="text-align: right;"><span lang="EN-US" style="font-size: 10pt; color: #000000;">(S.I)</span></p>
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2021-12-26T00:00:00+09:00
No.10
https://hsg-zokei-kan.jp/info/4315079
<p style="text-align: justify;"><span style="font-size: 13.3333px; color: #000000;"> 光について考えてみましょう。光と闇。光のあるところには、必ず光のもとがあります。夜の闇では星や月の光が、昼には太陽の光があります。光があたるところには陰があり、明るさと暗さの調子によって「物のかたち」が立体視されます。この陰影の幅が大きいほど、形がデリケートに印象づけられます。夜間には太陽光に代わるものとして、人工光としての「照明」が工夫されてきました。太陽光もそれぞれの季節や天候の違い、時間によって常に変化していますが、人の視覚は、この明るさの変化の中で物を見ることに慣れています。建築においては、古くから太陽の光を使って様々な透過光や反射光として上手に「濾過させて使う」という工夫がなされてきました。造形においても物が置かれる適切な「光環境」がとても重要になります。物の見え方は、光の状況によって大きく変化してきます。配慮された光のもとで質感や色の深み、肌合いなどを充分に鑑賞することができます。人工照明も明るさの道具としてだけではなく、人の目にも物の鑑賞にも柔らかく優しい環境づくりのためのものであるということを改めて感じています。</span></p>
<p><span style="font-size: 10pt; color: #000000;"> </span></p>
<p style="text-align: right;"><span lang="EN-US" style="font-size: 10pt; color: #000000;">(S.I)</span></p>
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2021-10-24T00:00:00+09:00
No.09
https://hsg-zokei-kan.jp/info/4203154
<p style="text-align: justify;"><span style="font-size: 13.3333px; color: #000000;"> 空間の不思議。上下左右限りなく広がっていく世界。空間という言葉からは、宇宙の無限性を感じます。地球上に限定して考えると人が立っている面と、見上げて面、ぐるりと見渡す周囲の広がりというとらえ方が自然です。その空間の中に1つのものを置いてみると、様々な印象が生まれてきます。人の目線や立っている位置によってもその印象は様々に変化します。配置されるものの数が2つ3つと増えてくるとそれぞれの関係性が生まれてきます。ものの向きやの光の状態によっても印象は違ってきます。空間の中では、人は、その「場」に参加し、ものと直に接することになり関係性の一部になります。空間の不思議さは、それまでの現実が、地上の重力や物質感から離れて、いつの間にか現実とは隔絶された象徴性へと転換していくことにあります。それまで、ものの1つ1つが単独では発してこなかった個性が、象徴的空間では、お互いに新たな個性を持った存在に生まれ変わります。造形表現における空間では、空間そのものの大小の概念をも超えて、独自の表現媒体として様々な心的宇宙を創り出すことができます。</span></p>
<p><span style="font-size: 10pt; color: #000000;"> </span></p>
<p style="text-align: right;"><span lang="EN-US" style="font-size: 10pt; color: #000000;">(S.I)</span></p>
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2021-08-21T00:00:00+09:00
No.8
https://hsg-zokei-kan.jp/info/4093667
<p style="text-align: justify;"><span style="font-size: 13.3333px; color: #000000;"> 「質」について考えてみましょう。画像や音については、目にし、耳にして明快で心地よく、画質、音質とし受け止められています。形あるものは、広く品質という言葉が使われていますが、造形では、素材(材質)の扱い方から始まって、材質感や光の印象、置かれている空間の状態まで、その良し悪しを総合的にとらえなければなりません。</span></p>
<p style="text-align: justify;"><span style="font-size: 13.3333px; color: #000000;">美の判断に一定の「よりどころ」があるように、質についても同じことがいえます。作者は制作の過程で質を追求し、満足度に至ったときに作品から手を離します。素材が持ち合わせている粗密感は、荒々しさや繊細さとして表現の可能性を秘めています。作品は、作者の手を離れたときから自立し、「時」の洗礼を受けることになります。時の流れとともに変化していきますが、深みとして存在感を増していくこともあります。制作すること、鑑賞すること、保存していくことは、それぞれが別の役割を担いながら作品と係わっています。「質」を共有しながらつながっているといえます。</span></p>
<p><span style="font-size: 10pt; color: #000000;"> </span></p>
<p style="text-align: right;"><span lang="EN-US" style="font-size: 10pt; color: #000000;">(S.I)</span></p>
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2020-12-28T00:00:00+09:00
No.7
https://hsg-zokei-kan.jp/info/3678801
<p style="text-align: justify;"><span style="font-size: 10pt; color: #000000;"> 自作『循環』という作品についてお話しします。<span lang="EN-US">1986</span>年にチェルノブイリに原発事故が発生しました。事故からおよそ10年後に桂の木を素材とした楕球状の立体として完成したのがこの作品です。表面に複数の線が現れては消え、全体としてはつながっている。ひとつの国や特定する地域に留まらず時間をこえて出来事は連鎖していく。おりしも現地で被爆した子供たちの心をいやす目的で作品の公募が企画され、野外展示に耐えるようにブロンズ用に原型を作り直して応募しました。<span lang="EN-US">1997</span>年に『<span lang="EN-US">INFINITY</span>』という題名でベラルーシのミンスク市にあるサナトリウム施設の庭に永久展示となりました。日常の生活の中には目に見えないものが沢山あります。無関係に思われているものがどこかでつながっている、そんな思いの作品です。同じ原型から鋳造したものが群馬県立土屋文明記念文学館の2階に展示されています。東日本大震災とそれに伴う原発事故では、この2つの作品の制作時の気持ちが蘇ってきました。新型コロナの感染拡大の懸念も重なり、地球全体がひとつであることを実感しています。</span></p>
<p><span style="font-size: 10pt; color: #000000;"> </span></p>
<p style="text-align: right;"><span lang="EN-US" style="font-size: 10pt; color: #000000;">(S.I)</span></p>
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2020-09-01T00:00:00+09:00
No.6
https://hsg-zokei-kan.jp/info/3473709
<p><span style="font-size: 10pt; color: #333333;"> 触れるということ。直に対象と接し、手にすることによって、多くのことを感じとります。人は、五感を通して様々な情報を体の中に取り込んでいきます。なかでも触感は、皮膚感覚として繊細な情報を与えてくれます。手で触れ、包む。日常の中での手を通しての経験は、体の一部となって記憶、蓄積され、日常のあらゆる場面において、ものを見極めていく大きな力になっています。造形において、手を動かしての思考は、その過程において多くのことを発見し、作り手にとってイメージを確かなものにしてくれます。ザラつきや滑らかさ、冷たさや暖かさ、重さや軽やかさなど、手の感覚による記憶は、素材感として、人とものとを密接に結びつけます。長年人の手で触れられ、艶やかにすり減っている用具や木像や石像などを見るとき、これまでに多くの人々が共有してきた時間がそこに在ることを感じます。触れてみたくなるもの、思わず触れてしまうものには、確かな存在感があり、その温もりに安堵します。</span></p>
<p><span style="color: #333333;"> </span></p>
<p style="text-align: right;"><span style="font-size: 10pt; color: #333333;">(S.I)</span></p>
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2020-05-05T00:00:00+09:00
No.5
https://hsg-zokei-kan.jp/info/3275041
<p><span style="font-size: 10pt; color: #333333;"> 「型」という言葉は、身近に使われています。鋳物の外・内型としての意味の他に、人の行為の手順や約束ごとにも使われています。一定水準の質を維持して、繰り返し再現する必要性から、人々に共通する認識として型というものが生まれてきます。ものづくりにおいては、制作までの手順の無駄を省き、より高い質の維持を求めて、型を進化させてきました。型には、人の知恵と工夫が詰まっています。行為の手順や約束ごととして使われるときは、人による解釈や表現に違いがない「手本」としての役割を果たし、学ばれ伝承されてきました。完成された型は、簡素で無駄のない美の裏付けをもっています。「型から学ぶ」ことは、そのための修練も必要ですが、そのことによって、多くのことを身につけることができます。一方で、「型にはまった」とか「型どおり」という言葉は、窮屈な意味にも使われています。社会の価値観が大きく変わろうとしているときには、これまでの型が崩れがちになります。型を破るにしても型の習熟あってのものです。創造するという意味も合わせて考えなければなりません。</span></p>
<p> </p>
<p style="text-align: right;"><span style="font-size: 10pt; color: #333333;">(S.I)</span></p>
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2020-01-25T00:00:00+09:00
No.4
https://hsg-zokei-kan.jp/info/3082818
<p><span style="font-size: 10pt; color: #333333;"> 丸や三角、四角という様にかたちを説明する言葉があります。造形の視点でとらえると、のびる、縮む、ねじれる、曲がる、反る、ふくらむ、へこむなどは、かたちの状態を表す言葉です。ずれる、合う、重なる、支えるなどは、関係性を示しています。ふっくらした、まろやかな、どっしりしたなど、個性を表す言葉もあります。滑らか艶やかなどは、手触りや触感を、彫る、削る、うがつ、重ねる、積む、組む、はめるなどは、素材に対しての人の行為を示しています。茶器には、部分を細かく分けてそれぞれ「見どころ」として呼び名をつけ鑑賞に役立てています。かたちを表す言葉は、決して多くはないのですが、他の言葉に置き換えられない程の役割を持っています。言葉は、人に伝えることと同時に、物の状態を観察し定着させていく上でも大きな役割を持っています。また、物事を可視化する上でも大きな手がかりとなります。ゆったり感やたっぷり感という言葉も造形の言語に加えながら「かたち」と向き合っていこうと思います。</span></p>
<p style="text-align: right;"><span style="font-size: 10pt; color: #333333;">(S.I)</span></p>
<p> </p>
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2019-12-10T00:00:00+09:00
No.3
https://hsg-zokei-kan.jp/info/2943001
<p><span style="font-size: 10pt; color: #333333;"> 冷和元年も残り少なくなりました。良いことも悪いことも様々でしたが、衝撃的なことの一つに沖縄県の首里城の火災がありました。防火設備に限らず先端技術が発達し、随所に取り入れられている中での不幸で、目に見えない危険が潜む日常の危うさに言葉を失います。首里城を訪れたのは、25年ほど前で、「正殿」「北殿」など主要な建物の復元がほぼ終わった頃でした。内部のしつらえや装飾などは未だ復元工事中でしたが、建物の外観や内部空間には、大らかで優しさと豊かさを感じました。その頃すでに修復のための木材の入手には大変苦労され、正殿の柱に使われている直径1m近くの木材は、国産材の調達は既に出来ず、台湾ヒノキが使われていました。この樹種も台湾での伐採が禁止され、今後は入手が不可能になるということも当時伺いました。木に限らず、自然素材は、人を包み込む様な肌感覚と時の累積を感じます。今後の復元には、今までにない様な知恵が求められています。</span></p>
<p style="text-align: right;"><span style="font-size: 10pt; color: #333333;">(S.I)</span></p>
<p style="text-align: right;"> </p>
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2019-09-20T00:00:00+09:00
No.2
https://hsg-zokei-kan.jp/info/2523658
<p><span style="color: #333333; font-size: 10pt;"> 作曲家で藝大教授、副学長も務められていた松下功さんが亡くなられて丁度1年になります。練習演奏の指揮中のことであったとお伺いしています。私の2010年の個展に出品した作品『鳥たちの時間』を観て、曲のイメージがわいたというお話から2年ほどした2012年に、ようやく楽譜ができましたというお知らせをいただきました。私の作品と同名のタイトルで、1台のハープと2本のフルートによる演奏からなる楽曲でした。展示のために東京・椿山荘のロビーに一時期お貸ししていた私の作品を前にして初演が行われました。作品の隣に据えられたハープの演奏に、遠方の右と左からフルートが近づき中央で一体となり、また次第に離れていくという、会場の「場」を見据えた演奏と演出で好評を博しました。その後、2017年に台東区生涯学習センターミレニアムホールでの演奏会で、松下さん自らの指揮で演奏録音され、その時のCDをいただくことができました。作品同士の触れ合いを通して、創作するということの原点を静かに感じています。</span></p>
<p style="text-align: right;"><span style="color: #333333; font-size: 10pt;">(S.I)</span></p>
<p> </p>
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2019-07-30T00:00:00+09:00
No.1
https://hsg-zokei-kan.jp/info/2942998
<p><span style="font-size: 10pt; color: #333333;"> 令和への改元と期をいつにして広瀬川造形館も開館となりました。開館までに多数の方々のご理解とご協力を得ましたことに感謝申し上げます。「こけら落とし」として2階の展示室でまず私からの作品展示となりました。お世話になった皆さまへご案内とさせていただきましたが、多数の方々にご来館いただきお礼申し上げます。</span></p>
<p><span style="font-size: 10pt; color: #333333;"> </span></p>
<p><span style="font-size: 10pt; color: #333333;"> 個人として「美術にできること」をゆっくりと考え、実行していきたいと考えております。妻の池田カオルとは、これまで長い期間を通してそれぞれ制作活動を続けてきました。二人同時の展示会としては、3年前初めて日本橋三越本店で「2人展」を企画していただきました。広瀬川造形館の今秋の企画展では、郷里の皆さまに見ていただけることを願って、改めて2人の作品展の開催を予定しております。この機会に皆さまにお会い出来ることを願っております。日程などにつきまして、当館のホームページでご確認ください。 </span></p>
<p><span style="font-size: 10pt; color: #333333;"> </span></p>
<p><span style="font-size: 10pt; color: #333333;"> 今後、一人でも多くの方々が当館へのご理解をいただき、ご支援をいただければ幸と存じます。</span></p>
<p><span style="font-size: 10pt; color: #333333;"> </span></p>
<p style="text-align: right;"><span style="font-size: 10pt; color: #333333;">池田政治(S.I)</span></p>
<p><span style="color: #333333; font-size: 10pt;"> </span></p>