Zo通信

2021-08-21 00:00:00

  「質」について考えてみましょう。画像や音については、目にし、耳にして明快で心地よく、画質、音質とし受け止められています。形あるものは、広く品質という言葉が使われていますが、造形では、素材(材質)の扱い方から始まって、材質感や光の印象、置かれている空間の状態まで、その良し悪しを総合的にとらえなければなりません。

美の判断に一定の「よりどころ」があるように、質についても同じことがいえます。作者は制作の過程で質を追求し、満足度に至ったときに作品から手を離します。素材が持ち合わせている粗密感は、荒々しさや繊細さとして表現の可能性を秘めています。作品は、作者の手を離れたときから自立し、「時」の洗礼を受けることになります。時の流れとともに変化していきますが、深みとして存在感を増していくこともあります。制作すること、鑑賞すること、保存していくことは、それぞれが別の役割を担いながら作品と係わっています。「質」を共有しながらつながっているといえます。

 

(S.I)

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