Zo通信
アーチのかたちの発見は、古代メソポタミア時代(紀元前2000年頃)といわれます。
紀元前8世紀から紀元前1世紀までイタリア中部を文化圏としたエトルリア人の手によって発展しましたが、紀元2世紀頃には、ローマ人により技術工法ともに体系化され、古代ローマ帝国建設の礎となりました。
石やレンガなど重くて圧縮に強い材料をアーチのかたちとして積み上げていくと上からの力が分散して垂直方向に強い構造体が生まれます。ローマ人は、アーチを巧みに使って巨大競技場や大浴場、内部に柱のない丸天井のパンテオンなど多様な建造物をつくりあげました。遠方から水を運ぶ水道橋のアーチは、大きさと完成度に驚かされます。12世紀に入って、縦方向に長く先の尖った「尖頭アーチ」により、壮大なゴシック様式の教会も多数建設されました。現代では、鉄骨や鉄筋コンクリートと素材を変えながらも身近な生活を支え続けています。
ひとつのかたちの発見が文化の礎になっているお手本のようで改めてかたちの可能性を再確認しています。
(S.I)
大気は、目に見えない。大気とは、天体(ここでは地球)をとりまく空気の層を指します。地表からおよそ1000Kmまでの距離の間に存在し、太陽からの熱や紫外線を弱め、地表で人が生存できるまでの環境を整えています。地表に近くなる程、含有している酸素や窒素の濃度が生命の生存に適度になっています。この絶妙な「仕組み」によって命が「生かされている」ということになります。
地表から15kmほどの高さまでは、「対流圏」と呼ばれ、空気の対流による気象現象が起こります。私たちは、対流圏で起こる様々な気象の変化によって初めて大気を見ることができます。水蒸気が加わることにより、空気の重さが変化し、暖かい空気は、上空に昇り、冷やされて雲が生じ、雨や雪となります。
私たちは、山々の向こうから湧き上がる雲の流れやかたち、樹々を揺らして通り過ぎる風を五感で感じとることができます。
地表からほんの数Kmの高さの中で生活し、絶えず循環している大気に順応しながら、感性を育て様々な変化を受け止めています。
(S,I)
石や木、土や水といった自然の素材の中でも、水は決まった形を持たない。例えば、露の一滴から始まる水は、滴り落ちて一筋の小さな流れとなり、いく筋もの流れは、更に大きくなって川へと姿を変えて行きます。小石や岩の間をわけて進むセセラギからは、心地よい音さえ感じられます。大河は、海運や灌漑として、生活には欠かせない存在になります。池や湖の水面は、周囲を映し込み、静かさをたたえます。水流は時として穏やかに激しくぶつかり合って波や渦となりす。段差を落ちる水は、滝に姿をかえます。この様に私たちが「水」を想像するとき様々な姿を思いおこすことができます。
日本では、水を連想して生れたとされる代表的な紋様に「流水文」があります。銅鐸の表面に美しく描かれています。「観世水」は渦を「菊水」は菊と水を合わせた形でいずれも縁起の良い吉祥文として親しまれてきました。
「水」は、身近にある素材であるにも関わらず、紋様としての数や種類が少ないのは、「かたち」が定まらない素材であり、バリエーションが生まれにくかったかもしれません。
(S.I)
広瀬川造形館の開設にあたり、「理想とする空間」のイメージとして下記の文章をHPに掲載してきました。この度HPの改訂にあたり、No.16に移行いたしました。
イタリアのラヴェンナにあるサン・ヴィターレという小さな聖堂を訪れた。
1984年の夏の暑い日で、人影も無く、古びた建物は、どこが入り口かも判らないほどの簡素な造りであった。
中に入ると天井が高く抜けていて、外観からはとても想像もできない開放感に満ち溢れていた。
内陣に施されたモザイクは、創建6世紀のものと言われ、見るからに劣化が進んでいたが、高窓から入る柔らかな光で輝き、まるで小さな宝石箱の中に入るような錯覚を覚えた。
数年後、大規模な修復が行われ、世界文化遺産となったが、この時の素晴らしい印象は忘れられない。
「時」と「人」と「場」、そんな空間を育てていきたい。
池田政治
1つの材の上に別な材をのせることは、生活の中ではごく自然に行われています。紙や布などの薄い素材は、重ね合わせることによって厚みも増し、保温性など単独では得られない良さが生まれます。色も何色かを重ねて使うことによって、色味の幅や深みをだすことができます。また、「重ねること」によって物をコンパクトに収納することもできます。石のようにボリュウムがある材については、大きな塊になればなるほど重量も重くなり移動も運搬も大変になります。人の手で扱える程度の大きさに加工し、「積む」ことにより1つでは得られないかたちの可能性が広がってきます。レンガも石材と同様に巨大な建造物の建設に役立ってきました。木の文化である日本でも、庭園の景色に欠かせない石灯籠も、それぞれが別々に加工された部材が積まれることによって多様性が生まれきました。木材では、重ねることに「組む」ことが加わり、寺院や五重塔のように大型で強靭な構築物も建造されてきました。このように「重ねる」という行為は、身近なものから巨大なものまで、かたちあるものの源の1つであるといえます。
(S.I)
