Zo通信 

2026-10-01 00:00:00

 綿の花から繊維を引き出して糸にする、紡ぐ(つむぐ)という言葉には、どこか懐かしく暖かさがあります。ワタのようにと表現される綿の花から小さな種を取り除き、繊維を薄く伸ばし、何層にも重ね、指先で縒り(より)をかけながら紡ぐ作業は、手わざの妙という他はありません。繭から細い糸を引き出す指先の動きも実に美しく繊細です。使用する道具の改良と機械による産業化によって、時間をかけて「コットン文化」「シルク文化」をつくりあげてきました。

手は、習熟することによって同じ動作を正確に繰り返すことができます。指先の動きは、触れる、摘む(つまむ)、伸ばす、押す、叩く、千切る、弾く(はじく)、結う、縒る(よる)、捻(ねじる)などじつに多様です。左右の手と連動すれば、さらに複雑な作業が可能となります。

手を開いて平らになる部分は「掌」(たなごころ)と呼ばれています。掌の少し凹んだ部分は、丸さを感じたり、丸いかたちを作ることが得意です。この部分を私は、「手のこころ」と呼んでいます。「手のこころ」でかたちを暖め、指先で模索しながら新しいかたちが生まれてきます。

(S,I)

 

 

 

2026-09-01 00:00:00

 ローマ郊外にあるカタコンべを訪れた時のことです。カタコンベとは、古代ローマ時代2~4世紀に迫害から逃れたキリスト教徒により造られ地下墳墓のことです。わずかに照らされた電灯の光の奥に、小さな赤茶色の水差しであろう壺が置かれていました。ふっくらとした胴の上部に「鳩」が生き生きと線彫りされていて、その愛くるしさは、心に残っています。

地球上には、1万種を超える鳥がいて、日本には、600種位の鳥が生息しているそうです。春先に姿を見せるメジロやシジュウガラは、爽やかな季節の到来を告げます。東洋では、伝統的に「花鳥図」というものがあり、屏風や襖絵、掛け軸に鴨や鶴、鶏、時には孔雀なども描かれ、縁起の良い題材として好まれてきました。

中国の神話に起源をもつ「鳳凰」(ほうおう)は、空想の鳥として我が国にも伝わり、建設の装飾や工芸の模様として優美な姿に成長しました。西洋では、「白い鳩」は、純真無垢の天からの仕えとして古くから教会の壁画にも描かれてきました。「鳥たち」ほど時空を超えて人々をひきつけ表現されてきた素材は他にないでしょう。

(S,I)

 

 

2026-08-01 00:00:00

地球の一番外側の部分は、地表と呼ばれ、そのほとんどは海。陸地は、わずか4分の1程度で、岩石と土で覆われています。岩石は、風化して、砂(2mm以下)となり、その中で更に粒子が細かいものに有機物と水や空気が混ざり合って地球の生命を育む「土」が生成されます。土の中でも最も粒子の細かいもの(直径0.002mm以下)は粘土と呼ばれ、水を含むと粘り気を持ち、外からの力に応じて一定の形を保ち乾くと固くなります。乾いたものに熱を加えて焼成すると固さが増し耐久性のある素材に変化します。高温度(800~1300℃)で焼かれたものは、水を通しません。生産地の違いにより土地ごとの特徴ある焼き物が生み出されてきました。土に水を加えて上澄み液を流したり、沈殿した重い粒子のものを取り除いたりして目的にあった粘土を求めることがてきます。この作業は、水簸(すいひ)と呼ばれています。粒子の細かい土からは、水簸絵具または泥絵具と呼ばれる伸びが良く風合いのある絵具も生まれてきました。豊かな「土」の文化は、豊かな「水」によって支えられ長い時間と共に今にあります。

(S.I)

2026-07-02 00:00:00

  アーチのかたちの発見は、古代メソポタミア時代(紀元前2000年頃)といわれます。

紀元前8世紀から紀元前1世紀までイタリア中部を文化圏としたエトルリア人の手によって発展しましたが、紀元2世紀頃には、ローマ人により技術工法ともに体系化され、古代ローマ帝国建設の礎となりました。

石やレンガなど重くて圧縮に強い材料をアーチのかたちとして積み上げていくと上からの力が分散して垂直方向に強い構造体が生まれます。ローマ人は、アーチを巧みに使って巨大競技場や大浴場、内部に柱のない丸天井のパンテオンなど多様な建造物をつくりあげました。遠方から水を運ぶ水道橋のアーチは、大きさと完成度に驚かされます。12世紀に入って、縦方向に長く先の尖った「尖頭アーチ」により、壮大なゴシック様式の教会も多数建設されました。現代では、鉄骨や鉄筋コンクリートと素材を変えながらも身近な生活を支え続けています。

ひとつのかたちの発見が文化の礎になっているお手本のようで改めてかたちの可能性を再確認しています。

                                                 (S.I)

2026-06-11 00:00:00

 大気は、目に見えない。大気とは、天体(ここでは地球)をとりまく空気の層を指します。地表からおよそ1000Kmまでの距離の間に存在し、太陽からの熱や紫外線を弱め、地表で人が生存できるまでの環境を整えています。地表に近くなる程、含有している酸素や窒素の濃度が生命の生存に適度になっています。この絶妙な「仕組み」によって命が「生かされている」ということになります。

地表から15kmほどの高さまでは、「対流圏」と呼ばれ、空気の対流による気象現象が起こります。私たちは、対流圏で起こる様々な気象の変化によって初めて大気を見ることができます。水蒸気が加わることにより、空気の重さが変化し、暖かい空気は、上空に昇り、冷やされて雲が生じ、雨や雪となります。

私たちは、山々の向こうから湧き上がる雲の流れやかたち、樹々を揺らして通り過ぎる風を五感で感じとることができます。

地表からほんの数Kmの高さの中で生活し、絶えず循環している大気に順応しながら、感性を育て様々な変化を受け止めています。

                  (S.I)

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