Zo通信

2023-02-26 00:00:00

  ある土地の人から「あれが牛伏山」と聞いた時、その指差す方向を目で追っているうちに、ゆったりと横たわっている1頭の牛の姿をとらえることができました。その手前に広がる田畑と集落の家々の姿と相まって、実にのどかな風景に改めて感じ入りました。元々はそうでないものに別なイメージを重ねることは、「見立て」と呼ばれ、ものと人を結びつける大切な役割があります。そのことによって、人とものの距離が急に近くなり、親しいものになることがあります。日本庭園では、山を築き、池を造り、石や石組みを配置する際に、日常よく知られている山や湖の名や生き物の名称をつけることがあります。リアルに再現しすぎると「なぞる」いうことになり嫌味にもなりますが、なるほどであれば「改めて感じみる」ということにつながります。陶芸においても焼成の過程で出来たムラや傷痕などに具体的なイメージを見出し、鑑賞することもあります。見立てるという背景には、見る人、使う人、そこに居る人がゆったりとした時間の中で、ものに触れ、愛で、一体になっている関係性があります。

 

(S.I)