Zo通信

2023-06-18 00:00:00

 1つの材の上に別な材をのせることは、生活の中ではごく自然に行われています。紙や布などの薄い素材は、重ね合わせることによって厚みも増し、保温性など単独では得られない良さが生まれます。色も何色かを重ねて使うことによって、色味の幅や深みをだすことができます。また、「重ねること」によって物をコンパクトに収納することもできます。石のようにボリュウムがある材については、大きな塊になればなるほど重量も重くなり移動も運搬も大変になります。人の手で扱える程度の大きさに加工し、「積む」ことにより1つでは得られないかたちの可能性が広がってきます。レンガも石材と同様に巨大な建造物の建設に役立ってきました。木の文化である日本でも、庭園の景色に欠かせない石灯籠も、それぞれが別々に加工された部材が積まれることによって多様性が生まれきました。木材では、重ねることに「組む」ことが加わり、寺院や五重塔のように大型で強靭な構築物も建造されてきました。このように「重ねる」という行為は、身近なものから巨大なものまで、かたちあるものの源の1つであるといえます。 

(S.I)

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